レバレッジETFとビットコインに投資しています。
初回公開日:2021年6月5日
最終更新日:2022年4月10日
今回は、生活必需品セクターに投資するETFであるXLP, VDC, KXIを紹介します。なおこれらはレバレッジなしのETFです。
地味で退屈なETFかもしれませんが、不況に強いという特徴があります。レバレッジETF投資家にも使いどころがあるかもしれません。
目次 (クリックでジャンプ)
XLP, VDC, KXI
概要
まずはそれぞれのETFの基本情報をまとめて紹介します。
正式名称:生活必需品セレクト・セクター SPDR® ファンド (Consumer Staples Select Sector SPDR Fund)
設定時期:1998年12月16日
配当利回り:2.53%
経費率:0.12%
流動性:純資産 102.8億ドル、平均出来高 12,924,717
正式名称:バンガード・米国生活必需品セクターETF (Vanguard Consumer Staples Index Fund ETF Shares)
設定時期:2004年1月26日
配当利回り:2.59%
経費率:0.10%
流動性:純資産 64.3億ドル、平均出来高 134,598
正式名称:iシェアーズ グローバル生活必需品 ETF (iShares Global Consumer Staples ETF)
設定時期:2006年9月12日
配当利回り:2.28%
経費率:0.46%
流動性:純資産 5.4億ドル、平均出来高 37,628
(いずれも2021年5月14日時点)
パフォーマンス
パフォーマンスを比較してみましょう。
期間は設定時期が最も遅いKXIに合わせて2007年以降とします。またS&P 500も比較対象に含めます。
配当は税金なしで全額再投資できたと仮定します。

年平均成長率/シャープレシオ(2007年1月-2021年4月)
XLP 9.96%/0.78
VDC 10.15%/0.80
KXI 8.18%/0.62
S&P500 9.97%/0.64
XLPとVDCのパフォーマンスに大きな差はありませんが、わずかにVDCが優っています。
両者の年平均成長率はS&P 500とほぼ同じですが、シャープレシオはS&P 500より高いです。これは不況の際のリスク(=リターンのばらつき)が低かったためです(後述)。
KXIは米国以外の企業にも投資していますが、経費率が高くパフォーマンスや流動性も低いため、あえて選ぶ理由はないでしょう。
XLPとVDCのどちらを選ぶかについては、
流動性重視→XLP
パフォーマンス重視→VDC
とするのがよいでしょう。
VDCの構成企業
それでは3つのETFの代表として、VDCの構成企業を見てみましょう。
96の企業から構成されていますが、そのトップ10は以下の通りです。

(2021年5月14日現在。一覧はこちら)
ほとんどが世界的に事業を展開している企業です。
VDCは米国籍ETFですが、これを買えば事実上全世界に分散投資できると言ってよいでしょう。
なお、生活必需品セクターのレバレッジETFは残念ながらありません。
以前はNEEDというレバレッジ3倍ETFがあったのですが、償還されてしまいました。
不況における下落率
生活必需品セクターの特徴は、不況に強いという点です。
VDCの設定後に大きな経済危機であるリーマンショックが生じたため、その際のドローダウンを他のセクターETFと比較してみましょう。
同じバンガードのETF同士で比較します。高配当株ETFのVYM、連続増配株ETFのVIGも含めています。
ただしS&P 500に対応するVOOは設定開始が2010年なので、SPYで代用しました。
最大ドローダウン(日次)は低い順に、以下の通りでした。
VDC -36.60%
VHT(米国ヘルスケアセクターETF) -40.91%
VIG -48.20%
VPU(米国公益事業セクターETF) -48.41%
VGT(米国情報技術セクターETF)-54.76%
SPY -56.47%
VOX(米国通信サービス・セクターETF) -58.29%
VYM -58.80%
VDE(米国エネルギー・セクターETF) -58.95%
VCR(米国一般消費財・サービス・セクターETF) -62.72%
VAW(米国素材セクターETF) -63.47%
VIS(米国資本財・サービス・セクターETF) -64.92%
VFH(米国金融セクターETF) -79.90%
VDCのドローダウンの低さは、ヘルスケアを抑えての1位となりました。
さらに、財務体質が優良な企業から構成されているVIGよりも下落に対して安定でした。
恥ずかしながら、VIGより安定しているとは知りませんでした。
生活必需品セクターの展望
投資家ならシーゲルの「株式投資の未来」をご存知の方が多いと思います。
特に配当再投資の重要性が強調されています。少し古い本ですが、全投資家必見の名著であり一読をお勧めします。
この本の57ページに、1957年から2003年のセクターごとのパフォーマンスが記載されています。

この期間、生活必需品セクターはヘルスケアに次ぐ2位のリターンをもたらしたとのことです。
ただしこれはあくまで過去のパフォーマンスです。この期間は時代背景が今とは全く違い、インターネットにいたってはほとんど使われていませんでした。
2010年になりハイテクが躍進します。生活必需品セクターは2010年代後半からS&P 500に水を開けられるようになってしまいました。

(配当再投資ありの場合。青がVOO、赤がVDC)
ハイテクの代表をアップル、生活必需品の代表をP&Gとし、ここ10年強での業績を比べてみましょう。売上高と利益に着目するのがわかりやすいと思います。
アップルの業績

P&Gの業績

(マネックス証券の銘柄スカウターより)
違いは一目瞭然です。
テクノロジーの発達により高付加価値を生み出し、アップルの売上高、利益は十数年で10倍以上に伸びました。今後もさらなる成長が期待できます。
一方P&Gはというと、十数年前から売上高も利益も大きく変わっていません。
生活必需品セクターのパフォーマンスは、「一定以上の経済力をもつ人口」で決まると考えられます。1人あたりの生活必需品への支出が2倍、3倍になる未来は考えにくいです。
これまでは世界人口が増加し、途上国の生活水準が向上したこともありリターンをもたらしました。世界人口が減少に転じればリターンは低下していくと思われます。
今後のさらなるAIの発展を考えると、生活必需品セクターのパフォーマンスがS&P 500を超えるのは困難でしょう。
それでも不景気でのドローダウンが低いのは大きなメリットです。加えて、基準価格は増加しにくいものの、分配金利回りは2.5%前後と魅力的です。
株ETFでありながら、半分債券のように扱えるかもしれません。
「エル式」のポートフォリオ
エルさんという方が、VDCを用いたPFを紹介されています。
こちらの記事で解説していますので、よかったらご覧ください。
2022年上旬の生活必需品セクター
2022年4月現在では金利上昇局面を迎え、ハイテクが不調です。
2021年12月末から2022年4月8日までのVDC, VOO, QQQのチャートを比較してみましょう。

QQQ(紫)は低調で、VOO(水色)の年初来リターンもマイナスとなっています。そんな中、VDCは一時的にマイナスに沈んだもののプラスに戻しています。
不況における安定性を、今回も発揮したようです。
生活必需品セクターの特性を理解した上で、PFに組み込むかを考えてみてはいかがでしょうか。
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