レバレッジETFとビットコインに投資しています。
前回、QLD(レバナスとほぼ同じ動きをするETF)の日次変動率の正確な式を導出しました。
私はQLDにもTQQQにも投資をしています。
自分が投資している商品の仕組みは詳しく知っておくに越したことはありません。
今回はTQQQで、同様に日次変動率を導出したいと思います。
後半では、その式を元に高精度なITバブルとリーマンショック時のTQQQのシミュレーションを行います。
TQQQ以外の3倍レバレッジETFでも似た式になる可能性が高いと思いますので、3倍レバレッジETFに投資している方もぜひご覧ください。
TQQQの日次変動率の式
今回の検証で導き出したのは以下の式です。

QLDの式の記事でも紹介しましたが、検証に当たってはかきすけ先生のnote記事を参考にさせていただきました。あらためて御礼申し上げます。
その記事で紹介されていたSPXLの日次変動率は以下の通りです。
SPXLの1日の値動き
=S&P500配当抜きの1日の値動き×3+
{(配当利回り×3)-(米国3か月債金利×2)} ×1/365
-(年率2.15%の固定コスト)
QLDの式でも、ナスダック100指数の配当利回り、米国3ヶ月債金利、固定コストが全て出てきました。だからTQQQでも似た形の式になる可能性が高いと考えました。
そのため、TQQQの日次変動率を以下のように仮定しました。
TQQQの日次変動率
=3 × ナスダック100指数(配当なし)の日次変動率
+ (前営業日からの日数)/365 ×
{3×(ナスダック100指数の配当利回り)
– 2 ×(米国3か月債金利)-(固定コスト)}
データソースはQLDの記事と同じで、Yahoo!Finance、Portfolio Visualizer、FREDのサイトです。
前回同様、ナスダック100指数などのデータからシミュレーションしたTQQQを「擬似TQQQ」、実際のTQQQを「現実TQQQ」と呼ぶことにし、擬似/現実比を同様に定義します。
擬似/現実比
= (擬似TQQQの価格) ÷ (現実TQQQの価格)
※ 開始時の価格がともに1となるよう調節する。
TQQQが販売開始されたのは2010年2月11日であり、TQQQについてはこの日から2020年12月末までのデータを用いました。
なお、TQQQの分配金はごくわずかなので無視しました。
固定コストを2.05%とすると、以下のグラフが得られました。

擬似/現実比はほぼ1で横ばい、上下への変動は多くて1%前後でした。
よって、固定コストを2.05%としました。
TQQQの販売会社はSPXLと異なりますが、SPXLの2.15%にかなり近い数字であり、妥当だと思います。
このようにして、以下のTQQQの日次変動率の式を導き出しました。

高精度なTQQQのシミュレーション
ITバブル崩壊とリーマンショック
2010年以前のTQQQのデータはないため、ITバブル崩壊もリーマンショックも経験していません。
今回導き出した式を用いて1985年から2010年までの擬似TQQQの価格を算出することで、それらの経済危機におけるシミュレーションができます。
そして2010年2月11日に擬似TQQQと現実TQQQが連続するようにそれ以前の擬似TQQQの価格を調節しました。
2021年10月1日までの36年間に及ぶ、擬似+現実TQQQのグラフは以下の通りです。

見やすいよう、縦軸を対数にします。

こうして見ると、もっとも目立つピーク(A)以外に、小さなピークや底があることがわかります。
AからDまでのTQQQ価格を調べて、36年間のTQQQの経過を見てみましょう。
1985年10月1日(開始日) 1.181ドル
2000年3月27日(A) 1078.2ドル
2002年10月7日(B) 0.4911ドル
2007年10月31日(C) 4.117ドル
2009年3月9日(D) 0.2037ドル
2010年2月11日 0.8651ドル
※これ以降は現実TQQQの価格
2013年10月18日 4.210ドル
(Cの価格を上回る)
2021年10月1日現在 127.48ドル
(有効数字は最大で4桁)
下落率は以下の通りです。
AからBまで 99.95%!!
AからDまで 99.98%!!!
CからDまで 95.05%!
Aから現在まで 88.24%!
TQQQはITバブルのピークには、初期値の1000倍近い価格になっていました。
それがITバブルの崩壊とともに暴落。
そこに追い討ちをかけるようにリーマンショック発生。
2010年代には急成長しましたが、いまだに2000年につけたピークから9割近く下落した位置にあるのです。
この10年のTQQQの爆発的な成長も焼け石に水であることがわかります。
レバレッジ3倍についての考察
これが、経済危機における3倍レバレッジETFのリスクです。
一度大幅に下落してしまうと二度と元に戻らないことがお分かりいただけたと思います。
ITバブル崩壊のような事態は二度と起きないだろうという楽観的な意見があります。確かにそうかもしれません。
しかし、リーマンショック級の経済危機が将来起きる可能性はそれよりも高いと思います。
リーマンショックではS&P 500もナスダック100指数も50%以上下落しました。そして、3倍レバレッジETFは95%程度下落することになります。
その後の経過を見ると、TQQQはリーマンショックの底から4年7ヶ月で、リーマンショック前の水準まで戻っていることがわかります。
ただし2010年代は史上最長の景気回復局面だったことに注意が必要です。
今後リーマンショック級の経済危機が来た後で、これくらい強い相場が年単位で続く保証はありません。投資期間中、二度と元に戻らない可能性は十分にあります。
TQQQに限らず、大きな経済危機では3倍レバレッジETFはこれくらい下落する可能性があると想定した方が良いでしょう。
このように常に3倍のレバレッジをかけるのは、経済危機の直撃を食らうため危険すぎます。
3倍のレバレッジをかけるなら常にではなく、以下のいずれかの対策を取るといいでしょう。
・人生の前半ではレバレッジを高くし、後半になるほどレバレッジを下げる。
こちらの記事で触れています。
・裁量トレードでレバレッジを調節する。
もっとも裁量トレードは個人の腕に左右されるため、かえってリターンが下がる可能性があります。
あるいは、株のレバレッジは最大でもレバナスと同じ2倍くらいにとどめておくのが無難でしょう。
投資の参考になれば幸いです。
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