「レバレッジド・コア・サテライト」でナスダック100にレバレッジ投資をしています。
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先日、半導体の3倍レバレッジETFであるSOXLについての記事を書きました。
SOXLはコロナショック後の株高を受けて急騰していて、Twitterには実際に投資している方もいらっしゃいます。
ここ10年の推移を見ると、SOXLは多少の経済危機は物ともせず順風満帆に見えるかもしれません。
ただ、かつてはコロナショック以上の経済危機が起きました。
SOXLが設定されたのは2010年3月11日であり、それ以前のITバブル崩壊やリーマンショックを経験していません。
そこでSOX指数をもとに1994年以降の擬似SOXLを計算し、経済危機でSOXLの価格がどのように推移するかをシミュレーションしました。
見えてきたのは、レバレッジETFの怖さでした。
レバレッジETFの投資家はリスクを理解しておくべきですので、ぜひご覧ください。
目次 (クリックでジャンプ)
擬似SOXLの計算
まず、SOX指数を用いて擬似SOXLを計算します。
全期間のSOX指数のデータは Yahoo FInanceからダウンロードできます。
SOX指数は1993年12月1日が100となるように基準が決められてますが、手に入るのは1994年5月4日以降のデータのみなので、そのデータを用います。
理想的には、SOXLとSOX指数には以下の関係が成立します。
(SOXLの1日の変動率)= 3 ×(SOX指数の1日の変動率)
…①
実際にはSOXLには経費や先物売買のための金利がかかるので、これにより計算される擬似SOXLより実際のSOXLの方が価格は低くなるはずです。
しかし意外なことに、SOXLが販売開始となった2010年3月11日以降で計算したところ、擬似SOXLより実際のSOXLの方が価格が大きくなりました。
したがって補正による下方修正は行わないこととし、①の式をそのまま用いて1994年5月4日〜2010年3月11日の擬似SOXLを計算しました。
全期間中のSOX指数は下のグラフの通りです。

擬似SOXLとそれ以降の実際のSOXLのデータを合わせた、1994年5月4日から2020年12月31日までの全データを「全期間SOXL」と呼ぶことにします。グラフは下のようになります。

縦軸は対数グラフであることにご注意ください。
なお、擬似SOXLと実際のSOXLが2010年3月11日に連続性を持つよう、
1994年5月4日の擬似SOXLは3214.53ドル
としました。
全期間SOXLと経済危機
それでは1994年以降の全期間SOXLのパフォーマンスを見ていくことにしましょう。
ITバブルまで
1994年5月4日、SOX指数は119.025で始まります。
その後はITバブルの波に乗り、2000年3月10日には1332.73と最初のピークに達しました。6年弱で約12.2倍になったので、CAGR(年平均成長率)は50%を超えています。
擬似SOXLは3214.53ドルで始まり、2000年3月10日にはピークとなる272105.7ドルをつけます。6年弱で約84.6倍になったので、CAGRは100%以上、すなわち平均して毎年2倍以上になった計算になります。
バブル期の半導体のパフォーマンスは素晴らしく、こういう相場ではSOXLは圧倒的なリターンを出すことがわかります。
ITバブル崩壊
しかし2000年、ITバブルが崩壊します。
ITバブル時のピークと崩壊後の底を比較すると、SOX指数と擬似SOXLは以下の通り暴落しました。
SOX指数:1332.73→214.06(83.94%下落)
擬似SOXL:272105.7ドル →32.77ドル(99.988%!下落)
(2000年3月10日のピークと2002年10月9日の底を比較)
SOX指数の下落も大きいですが、擬似SOXLはITバブル崩壊で
99.988%!
も下落することになります。
その後SOX指数は多少持ち直し、2004年1月12日には560.65(ピークから57.93%低下)をつけます。
しかしそこから大きな上昇はなく、2007年までは200-500前後のレンジ相場を推移しました。リーマンショック前のピークは、2007年7月17日につけた546.59でした。
擬似SOXLも低迷します。レンジ相場だったため本来の上昇力が発揮できず、2007年7月17日には121.796ドルと小さなピークをつけました。
リーマンショック
2007年サブプライムローン問題が発生し、2008年には大規模な経済危機であるリーマンショックが起きます。その前後での下落率は以下の通りです。
SOX指数:546.59→171.32(68.7%下落)
擬似SOXL:121.796ドル →2.057ドル(98.31%!下落)
(2007年7月17日のピークと2008年11月20日の底を比較)
ITバブル崩壊で暴落した擬似SOXLは、リーマンショックでも98.31%という暴落に見舞われたのです。
その後〜2020年
ここからは実際のSOXLのデータです。
2010年代は好調で、SOX指数とSOXLは小幅な下落を起こしながらも上昇を続けます。
2008年の後半には、クリスマスショックとも呼ばれる株価下落が起きました。このときの下落率は以下の通りです。
SOX指数:1445.9→1069.39(26.0%下落)
SOXL:201.28ドル →67.08ドル(66.7%下落)
(2018年3月12日のピークと同年12月24日の底を比較)
SOXLは下落しましたが、上昇力により間もなく直前のピークを回復。
コロナショック時の下落率については以前の記事でも紹介しましたが、あらためて記載します。
SOX指数:1979.5→1298.54(34.4%下落)
SOXL:325.98ドル →63.95ドル(80.4%下落)
(2020年2月19日のピークと同年3月20日の底を比較)
その後はSOX指数、SOXLは目覚しい上昇を遂げ、2020年12月31日にはそれぞれ2795.5、466.48ドルをつけました。
全期間でのパフォーマンス
1994年から2020年までのSOX指数と全期間SOXLのパフォーマンスをまとめると、以下の通りです。
1994年5月4日 119.025(初期値)
2000年3月10日 1332.73(最初のピーク)
2008年11月20日 171.32(底)
2017年11月21日 ピークを回復
2020年12月31日 2795.5(史上最高値を更新中)
最大ドローダウン 87.15%
1994年5月4日 3214.53ドル(初期値)
2000年3月10日 272105.7ドル(ピーク)
2008年11月20日 2.057ドル(底)
2020年12月31日 466.48ドル(ピークの0.17%)
最大ドローダウン 99.9992%!
SOX指数はITバブル崩壊やリーマンショックで大きく下落したものの、2017年には史上最高値を更新し、現在も更新し続けています。
一方で全期間SOXLの最大ドローダウンは99.9992%と、ITバブル崩壊前のピークの10万分の1以下になったことになります。
その後上昇しているにも関わらず、いまだにピークの500分の1未満で、初期値の5分の1未満なのです。
レバレッジETFの危険性
ここまで読んでいただいた皆様は、SOXLのリスクをご理解いただけたと思います。
このように、一度大きな経済危機が起こればその後どれだけ市場が好調でも元の水準まで戻らないことこそ、レバレッジETFに潜む危険性なのです。
SOXLだけではありません。noteの記事にも書きましたが、擬似TQQQもITバブル崩壊が起きれば暴落するのです。
もっとも、ITバブル崩壊は特殊な出来事であり今後同程度の経済危機は起きないという意見もあるかもしれません。
ただ、リーマンショック以降だけを切り取っても、SOXLは98%以上下落し回復までに10年以上かかっています。
半導体は有望だからSOXLはいずれ元に戻るという考えが、いかに危険かおわかりいただけたでしょうか。
以前の記事で書いた通り、私がSOXLに投資するならストップロスと入れるのは、このようなリスクがあることを想定しているからです。
SOXLは有望な投資対象ですが、投資の際は十分に注意することをお勧めします。
投資はくれぐれも自己責任で。
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