投資戦略「レバレッジド・コア・サテライト」を運用しています。
「レバッレジド・コア・サテライト」についてはこちらをご覧ください。
この戦略のコアの部分にはナスダック100の2倍レバレッジETFであるQLDを採用しています。
また投資信託のiFreeレバレッジNASDAQ100も同じくレバレッジ2倍です。最近Twitterで投資しているという人を見かけます。
レバレッジをかけることで期待リターンは高くなりますが、当然リスクも高くなります。
半導体の3倍レバレッジETFであるSOXLのリスクについては、以前の記事で解説した通りです。
レバレッジ2倍なら3倍よりはリスクが低いですが、投資するならどの程度のリスクかは把握しておいた方が良いでしょう。
QLDの設定開始日は2006年6月21日で、リーマンショックは経験していますが、それ以前、例えばITバブル崩壊時のデータはありません。
一方、1985年以降のナスダック100のデータは残っています。
そこで設定開始後については実際のデータを、設定前についてはナスダック100のデータから計算した「擬似QLD」を用いて、1985年以降のQLDのパフォーマンスを評価します。
目次 (クリックでジャンプ)
設定開始後のQLDのパフォーマンス
レバレッジド・コア・サテライトの記事でも触れましたが、あらためて設定後の2006年6月21日から2020年12月31日までのデータを簡潔に示します。
この期間のパフォーマンスは以下の通りです。一部データはPortfolio Visualizerからのものです。またQLDの日次データはYahoo Financeからダウンロードできます。
2006年6月21日 4.515625ドル(開始日)
2007年10月31日 7.654375ドル(最初のピーク)
2009年3月9日 1.225ドル(底)
2020年12月31日 115.11ドル
CAGR(年平均成長率) 26.11%
標準偏差 37.02%
最大ドローダウン 84.0%
シャープ・レシオ 0.79
ソルティオ・レシオ 1.25
リターンは大きいですがリスク(標準偏差)も大きいです。特にリーマンショクの最中には84%ものドローダウンを見せました。
コロナショックの期間にも最大ドローダウン51.7%と大きな下落を見せました。
レバレッジをかけているので当然ですが、経済危機で大きく下落することを理解しておく必要があります。
擬似QLDの計算
ナスダック100は1985年10月1日以降のデータが残っていて、Yahoo Financeからダウンロードできます。
このデータをもとに、1985年10月1日から2006年6月21日までの擬似QLDのデータを計算します。
(QLDの1日の変動率)=2×(ナスダック100の1日の変動率)
の式に従って、日々の変動率を単純に2倍して掛け合わせればできそうな気がします。
しかしこの方法で2006年6月21日以降の擬似QLD価格を計算してみたところ、実際のQLDは擬似QLDをかなり下回ることがわかりました。
乖離の原因として、経費や先物取引に関わる金利などが考えられます。
そこで2006年6月21日から2020年12月末までの実際のQLDのデータをもとに、より正確に擬似QLDを求められるような係数を算出しました。詳細は割愛しますが、式は以下の通りです。
(QLDの1日の変動率)=1.9296×(ナスダック100の1日の変動率)-0.00004
計算された擬似QLDは以下の通りで、実際のQLDと極めてよく一致します。

この式を用いて1985年10月1日から2006年6月21日までの擬似QLDを算出しました。
これに、2006年6月21日から2020年12月末までの実際のQLDのデータを連続性を持つようにつなげたのが下のグラフです。
1985年10月1日を1としてナスダック100と比較しています。縦軸は対数グラフであることにご注意ください。

擬似QLDの開始時の価格を約0.159ドルとすることで、2006年6月21日には実際のQLDと同じ4.515625ドルになるようにしました。
この擬似QLDと実際のQLDを合わせたものを「全期間QLD」と呼ぶことにして、推移を見てみましょう。
全期間QLDの推移
主要な経済危機を中心に見ていくことにします。
ブラックマンデー
1987年10月19日、ニューヨーク株式市場で史上最大の暴落が起きました。これがブラックマンデーと呼ばれる出来事です。
これによりナスダック100は直前のピークから40.0%下落しました。
QLDは1987年10月5日のピークから最大65.0%も下落し、再びそのピークを超えたのは1989年10月5日でした。回復までに丸2年かかったことになります。
しかしその後も擬似QLDは力強く上昇を続けました。ITバブルの崩壊直前の最高値は、2000年3月27日の約87.945ドルでした。これは開始時の500倍以上であり、計算上1年あたり50%以上上昇したことになります。
ITバブル崩壊
2000年から2001年にかけてITバブルが崩壊し、株価は大幅な下落となりました。ナスダック100は直前のピークから82.9%も下落しました。
その後遺症が残る2003年までの期間に、擬似QLDはピークから98.3%下落!しました。
リーマンショック
再び景気拡大を受けて擬似QLDは上昇に向かったのですが、そこにサブプライムローン問題からのリーマンショックが襲います。
ここからは実際のQLDの価格で判断します。
QLDが底値をつけたのは、2009年3月9日の1.225ドルでした。これはITバブル崩壊前のピークと比較して98.61%下落したことになります。
その後〜2020年
景気拡大局面となった2010年代にはQLDは上昇を続けましたが、さすがにこれだけのドローダウンからの回復には時間を要しました。
ITバブル崩壊前のピーク(擬似QLDは87.945ドル)まで回復したのは、なんと2020年8月5日!つまり回復まで20年以上かかったことになります。
そして今に至り、2020年12月末にQLDは115.11ドルをつけました。
全期間でのパフォーマンス
全期間QLDのシミュレーションをまとめると以下の通りです。
1985年10月1日 0.15898ドル(開始)
2000年3月27日 87.945ドル(最初のピーク)
2009年3月9日 1.225ドル(底)
2020年8月5日 ピークを回復
2020年12月31日 115.11ドル(最高値を更新中)
最大ドローダウン 98.61%
CAGR 20.6% (35年2ヶ月で約724倍)
最大ドローダウンは98.61%、ドローダウンからの回復に20年4ヶ月を要したことになります。
終わりに
今回紹介した全期間QLDのパフォーマンスを見て感じることは人それぞれだと思います。
iFreeレバレッジNASDAQ100もほぼ同じ動きをすると考えられます。
リスクが高すぎてとても投資する気にはなれないという人もいるでしょう。
確かに多くの人は、投資でレバレッジをかける必要はないかもしれません。QLDやTQQQには手を出さずにQQQのみを買うのでも十分だと思います。
それでも私はQLDを主力として投資しています。
その理由の一つは、ITバブル崩壊の再来はまずないと思っているからです(万が一起きた場合には投資方針を変更して対応しますが)。
ナスダック100はレバレッジなしでもITバブル崩壊で82.9%下落し、回復するまでに15年以上かかっているのです!
(ITバブル崩壊前のピークまで回復したのは2015年11月3日)
インデックス投資をされている方で、自分の投資対象が80%以上下落したり、15年以上回復しない可能性を想定している方はどのくらいいるでしょうか。
もちろん人類が存亡の危機に瀕するような事態になればそういうこともありうるでしょう。しかしそこまで考えると投資自体できなくなりますし、備えるのも困難でしょう。
私はナスダック100が今後ここまで暴落することはないと信じ、QLDへの投資を続けたいと思います。
個人投資家はリスク許容度、資産目標、それをいつまでに達成するか、などを総合的に勘案した上で投資法を決めます。他人に迷惑をかけず自己責任で投資する限り、どんなものに投資するのも自由なのです。
参考になれば幸いです。
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