レバレッジETFとビットコインに投資しています。
QLDは、レバナスとほぼ同じ動きをするETFです。
以前、QLDがITバブル崩壊でどのように動くかをシミュレーションをしました。
この記事では以下の計算式を用いました。
ただその後調べたところ、この式はQLDの値動きを決める要素の一部しか見ておらず、正確なシミュレーションができていないことがわかりました。
そこで今回、新たにQLDのシミュレーションをやり直しました。
おそらく2021年10月現在、最も高精度なレバナスのシミュレーションだと思います。レバナスに投資している方はぜひご覧ください。
かきすけ先生の式
参考にさせていただいたのは、かきすけ先生のnoteです。
かきす先生は、レバレッジETFについて詳細な分析をされています。
上の記事にある、SPXLの1日の値動きの式を引用させていただきます。
SPXLの1日の値動き
=S&P500配当抜きの1日の値動き×3+
{(配当利回り×3)-(米国3か月債金利×2)} ×1/365
-(年率2.15%の固定コスト)
かきすけ先生にはこの場を借りて御礼を申し上げます。
このようにレバレッジETFは元本の2-3倍のポジションを取るため、どこかから借金をして資金を調達しなければなりません。その際の金利が米国3ヶ月債の利回りにほぼ等しいので、その分を差し引いていることになります。
QLDも同じように2倍のポジションを取るため、金利がかかるはずです。
またナスダック100指数からは少し配当も出るため、その分リターンに上乗せされているかもしれません。
今回はこういった要素についても合わせて検証しました。
後半では得られた式を元に、1985年からITバブル崩壊、現実のQLD販売開始までを含む期間のシミュレーションを提示します。
レバナスの日次変動率の式
今回の検証で導かれたのは以下の式です。

以下、解説します。
データソース
以下のサイトから誰でもデータにアクセスできます。
・QLDの過去データ(2006年6月〜)
Yahoo!FinanceのQLDのページからダウンロードできます。
・ナスダック100指数の過去データ(1985年10月〜)
Yahoo!Financeのナスダック100指数のページにあります。
なお、「ナスダック100指数」と「ナスダック総合指数」は別物なので気をつけてください。
・ナスダック100指数の配当利回り
ナスダック100指数に対応するETFであるQQQの配当利回りは、Portfolio Visualizerから得ることができます。
QQQ 100%のポートフォリオを設定し、”Display Income” をYesにします。
すると、解析結果の “Annual Returns” のところに以下のように “Yield” として表示されます。

QQQは年間の経費率が0.20%と高いですが、QQQの分配金とナスダック100指数の配当はそれほど大きく違わないと見てこの数値を用いることにしました。
なおQQQが販売開始となった1999年以前の分配金のデータはありませんが、ここでは0%とします。
実際、1999年4月から2002年までは0%ですし、その前はバブルだったので分配金は0%か、あったとしても無視できるレベルと考えました。
・米国3ヶ月債利回り
FREDのサイトから “3-Month Treasury Bill” のレートをダウンロードしました。
計算式の導出
QLDを販売しているのはProShares社であり、SPXLを販売しているDirexion社とは異なります。
QLDの日時変動率を表す式が、SPXLと似た形になるかはわかりません。
だからある程度の試行錯誤は必要でしょう。
ここで、ナスダック100指数などのデータからシミュレーションしたQLDを「擬似QLD」、実際のQLDを「現実QLD」と呼ぶことにします。
また以下のように「擬似/現実比」という言葉を定義します。
擬似/現実比
= (擬似QLDの価格) ÷ (現実QLDの価格)
※ 開始時の価格がともに1となるよう調節する。
擬似/現実比が一定であるなら、擬似QLDと現実QLDの動きが全く同じであることを意味します。
擬似/現実比がどんどん大きくなるなら擬似QLDの価格を過大評価、小さくなるなら過小評価していることになります。
まずはナスダック100指数の日々の値動きを単純に2倍しただけの擬似QLDを作成します。
現実QLDでは年間の経費率が0.95%かかりますが、それもいったん無視します。
するとQLD販売開始時から2020年末までの擬似/現実比は以下のようになりました。

このグラフからわかることがあります。
まず、①と②の部分で、擬似/現実比が急激に上昇しています。
現実QLDのデータを調べたところ、①は2006年12月20日、②は2007年12月20日でした。
(2021年10月18日、以下の部分に訂正と追記)
①と②の日にはナスダック100指数がほとんど動いておらず、擬似QLDはほとんど変化していないのに、現実QLDだけが5%前後も下落しました。
調べたところ、QLDは①と②の日に5%前後の分配金を出しており、その分価格が低下したようです。これにより擬似/現実比が跳ね上がったのです。
その後もQLDはごくわずかな分配金を出していますが、その利回りは極めて小さいため無視することにします。
次に③の部分です。ここでは擬似/現実比がいったん下落に転じ、その後緩やかに上昇しているのがわかります。これは何を意味するのでしょうか。
③の時期は金利が低下していました。
このことは、現実QLDの価格に金利が絡んでいることを示唆します。
金利が下がった結果現実QLDのパフォーマンスが押し上げられ、擬似QLDとの差が縮まり、擬似/現実比が低下したのです。
さらに、配当利回りを入れたケースと入れないケースを比較したところ、前者の方が現実QLDに近いパフォーマンスを得られることがわかりました。
以上より、QLDの日次変動率を以下のようになっていると考えました。
QLDの日次変動率
=2 × ナスダック100指数(配当なし)の日次変動率
+ (前営業日からの日数)/365 ×
{2×(ナスダック100指数の配当利回り)
-(米国3か月債金利)-(固定コスト)}
かきすけ先生は “1/365” という数値を用いていますが、金利や配当利回りは休日を挟めば日数分かかると考えました。だから上のように、(前営業日からの日数) ÷ 365としました。
あとは固定コストを求めれば式が完成します。
固定コストをQLDの経費である0.95%としても、擬似/現実比は上方に乖離しました。
固定コストを1.65%まで上げると、以下のグラフが得られました。

いかがでしょうか。
2006年と2007年の急上昇の部分を除き、綺麗な一直線を描いています。擬似QLDと現実QLDの動きがほぼ一致していることがわかります。
よって、固定コストを1.65%に決定しました。
これにより得られたレバナスの日次変動率の計算式を再掲します。

おそらく、現時点で最も高精度な計算式だと思います。
ITバブル崩壊時のレバナスのシミュレーション
以上の式を用いて、1985年からITバブル崩壊後、そして2021年10月1日現在に至るまでのQLDのシミュレーションをあらためて行いました。
現実QLDも合わせると36年間におよぶシミュレーションで、レバナスも理論上これと同じ動きをするはずです。
2006年6月19日に擬似QLDが現実QLDと連続するよう、それ以前の擬似QLDの価格を調整しています。
結果のグラフは以下の通りです。

2001年ごろに大きなピークがありますが、その後は長期間低迷していて、ピークを超えたのは最近のようです。
見やすいよう、縦軸を対数にしてみましょう。

図のように、AからDまでポイントを設定しました。擬似または現実QLDの価格の経過は以下の通りです。
1985年10月1日(開始日) 0.2266ドル
2000年3月27日(A) 62.39ドル
2002年10月7日(B) 0.7795ドル
2006年6月21日(QLD販売開始) 2.258ドル
※これ以降は現実QLDの価格
2007年10月31日(C) 3.827ドル
2009年3月9日(D) 0.6125ドル
2021年1月25日 62.87ドル(Aを上回る)
2021年10月1日 73.75ドル
(有効数字は最大で4桁)
下落率は以下の通りです。
AからBまで 98.75%!
AからDまで 99.02%!
CからDまで 84.00%(現実QLDのデータ)
QLDがITバブル崩壊前のピークAまで回復したのは2021年1月であり、20年以上を要することがわかります。ナスダック100指数の下落の大きさと、QLDの価格の戻りにくさがわかります。
では、未来のレバナスにもこういう可能性を想定すべきでしょうか。
私は、そのようなことはまず起こらないと楽観的に考えています。
ITバブル崩壊はもう起きないという意見もありますが、それ以上に、これだけ高金利になる時代はまず来ないと思います。
レバナスのリターンが押し下げられた一因として、1990年代から2002年ごろまで高金利が続いていたこともあります。米国3ヶ月債の利回りは4-5%がざら、時には7-8%のこともありました。
昔の日本もそうでしたが、当時は銀行に預金をしただけで株と同程度の利回りが得られた時代でした。
今後は世界的に低金利が常態化し、そのような高金利の時代が来る可能性は低いと思います。低金利はレバナスホルダーにとって有利なのです。
(高金利が続く時代が来たら、株ではなくBNDなどの債券ETFでも十分なリターンが得られるでしょう。)
私は高精度なシミュレーションの結果を提示しましたが、その解釈は読者の皆様にお任せします。
参考になれば幸いです。
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QLDはちょっとですが分配金があるので,
Mar 25, 2020 0.00225 Dividend
Dec 24, 2019 0.0125 Dividend
Jun 25, 2019 0.01025 Dividend
Mar 20, 2019 0.01575 Dividend
NASDAQ100の配当利回りを全部日時変動に乗せるのは,誤差が出ると思います.
固定分を想定(0.95%)以上に大きくしないと”現実”と合わないのは,
これが理由ではないでしょうか.
確かにQLDからは分配金が出ていますが、利回りはごくわずかであり、計算式に影響を与えるレベルではないと考えています。
実はナスダック100指数の配当利回りが0%、経費が0.95%としたシミュレーションも行ったのですが、結果は、擬似QLDのリターンは現実QLDからどんどん下方に乖離していくというものでした。配当利回りを入れ、0.95%以外に隠れコストがあると想定することで両者を一致させることができました。この点はかきすけ先生のSPXLのシミュレーションとも一致しています。
長期でならすとQLDの1日の変動に配当分のリターンが少しずつ上乗せされるのだと思います。
追記です。
確かに、2006年12月20日と2007年12月20日の現実QLDの下落は5%程度の分配金を出したことによるもののようです。この部分を訂正しました。
それ以外の分配金は計算式の上では無視できるレベルと判断しました。