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初回公開日:2021年6月23日
最終更新日:2022年3月22日
皆様の中には、両学長をご存知の方が多いと思います。
Youtubeの「リベラルアーツ大学」で、マネーリテラシーを高めるための情報を発信されています。
情報をまとめた書籍「本当の自由を手に入れるお金の大学」が2020年に出版されましたが、Amazonでは5000以上の評価の平均が星4.6と非常に高評価です。私もこの本を紙媒体で持っています。
この本の中で、保険について触れている章があります。
そこには「ほとんどの保険は不要」と書かれていて、医療保険やがん保険に対しても否定的な立場を取っています。
以下では、がん保険も医療保険の一種としてまとめて取り上げます。
両学長の発信を根拠に、あるいは「若いから病気にはならない」などと、医療保険を否定する意見をたまに見かけます。
断っておきますが、私は医療保険やがん保険に入っていません(理由は後述)。
本当に医療保険は必要ないのでしょうか。
他人の言うことを鵜呑みにして、あるいは何も考えず、必要ないと決めつけて良いのでしょうか。
今回の記事では、医師としての視点も含めて解説します。
記事中で「本当の自由を手に入れるお金の大学」の記載を引用する場合はページ数を記します(45ページならp45、というように)
医療保険についての考え方
医療保険についてのセクションでは、日本の国民皆保険制度を取り上げつつ、概して医療保険の必要性は低いと述べています。
p45、Q&Aの3番を引用します。
Q. 実際に病気にかかった友人が、保険に入っていたおかげで助かった!って言ってたけど……。
A. もちろんそういう人だっているよ。でも、それは「保険」っていうギャンブルに買っただけだね。確率的に言えば、金銭的に得する人の方が少ないんだ。
パチンコで勝った人に「パチンコやった方が良い?」って聞いたら、「絶対やった方がいいよ!」って言うのと一緒だね。
そもそも、保険料という名のギャンブル代を払わなくて済むように、普段から健康に気を遣った生活(バランスのとれた食生活、運動、ストレスを減らす、予防医療を受けるなど)と、しっかりとお金を蓄えていくことが大事だよ。
いかがでしょうか。
私は違和感を覚えた箇所があります。以下解説します。
健康に気を遣えば保険は不要?
まず、「健康に気を使った生活」の部分です。
確かに健康に気を遣っていれば、そうでない場合より病気のリスクは下がります。
例えば、禁煙は絶対必要です。
タバコは心筋梗塞や肺がんなど多くの病気のリスクになり、やめることでそのリスクは減らせます。
では、以下は正しいでしょうか。
実は間違いです。
肺がんになった=タバコが原因、と思っている方も多いのではないでしょうか。
しかし、肺がんの中にも色々なタイプがあり、特に「肺腺癌(せんがん)」というタイプのがんは、喫煙とは無関係に発症します。
しかもこの肺腺癌は、30代〜40代と若い世代でも見られ、まれにですが20代で発症することもあるのです。
また頻度は減っていますが、働き盛りの年代で胃癌になるひともいます。
若い人の癌は不摂生が原因というより、遺伝の要素が強いのです。
癌になってしまうと、手術をするなら入院が、抗がん剤治療には通院が必要で、お金がかかります。
加えて、病気や治療の影響により、今までと同じペースで仕事を続けるのが難しくなることもあります。がんに対して会社の理解があっても、給料が下がることは十分にありえるでしょう。
健康に気を遣ったとしても思ったほど病気は防げないのです。
健康に気を遣うのは当然として、それでも病気や怪我になるケースを想定した上で決めるべきだと思うのです。
血の繋がった親族に消化器系のがん(胃癌など)の人が多い場合、若くして消化器系のがんを発症する可能性があります。また、1型糖尿病の方は一部のがんのリスクが高まります。
こういった人ががん保険に入るのは、妥当な判断だと思います(1型糖尿病でも入れるがん保険があるそうです)。
さらに、入院が必要になるケースは病気だけではありません。
不慮の事故や犯罪に巻き込まれてけがをして入院するケースもあります。自分に落ち度がなくても、治療費は払わなければなりません(加害者に治療費を請求できれば話は別ですが)。
長期間入院した場合、収入が途絶えるリスクがあることは十分に理解しておくべきでしょう。
保険はギャンブル?
上のQ&Aでさらに問題だと感じたのは、以下の表現です。
両学長は、保険をギャンブルと同じであるかのように表現しています。
断っておきますが、私は両学長が本気でそう思っているわけではなく、わかりやすい比喩としてあえてそう言っているのだと思います。
しかし、この表現を鵜呑みにしてしまう信者がいないとも限りません。
この表現は妥当なのでしょうか。
Q&Aの「保険」を、自動車保険の「任意保険」に置き換えてみましょう。
任意保険は、交通事故を起こして他人にケガ・死亡をさせた場合や、他人の物を壊した場合に、限度額無制限で賠償金を払ってくれる保険です。
あくまで「保険はギャンブルか」を論じるための表現であり、医療保険と任意保険の必要度が同等という意味ではりません。
そもそも両学長は任意保険加入を強く勧めています。
Q&Aはこのようになります。
Q. 実際に交通事故を起こして他人を死亡させてしまった友人が、任意保険に入っていたおかげで助かった!って言ってたけど……。
A. もちろんそういう人だっているよ。でも、それは「保険」っていうギャンブルに買っただけだね。確率的に言えば、金銭的に得する人の方が少ないんだ。
パチンコで勝った人に「パチンコやった方が良い?」って聞いたら、「絶対やった方がいいよ!」って言うのと一緒だね。
そもそも、保険料という名のギャンブル代を払わなくて済むように、普段から安全運転を心がけることが大事だよ。
こうすると、多くの人はおかしいと感じるのではないでしょうか。
「自分は安全運転をしていて事故を起こしたことはない。事故を起こす確率は低いから、保険料を無駄にするだけだ。だから任意保険に入る必要はない。」
こう言うひとが結果的に事故を起こさなかったとしても、任意保険に入らないことの方がギャンブルではないでしょうか。
当たり前のことですが、
保険はギャンブルとは違う。
しかし、例えが理解できず、文字通りに取る「クソ真面目」な人が、
保険はパチンコと同じでギャンブルだって!両学長がそう言っていた。
と信じてしまう恐れがあります。
保険会社が儲かるのは事実ですが、保険は「万が一の保障を買う」という構造上、損をする前提なのです。
保険で得をする(=保険金がおりる)のは、自分や他者に不幸があった時なのです
だから、保険を損得で考えてはいけないのです。
医療保険を考慮すべきケース
かといって、医療保険が絶対必要とは思いません。
では医療保険に入るかどうかは、どのように判断すべきでしょうか。
「本当の自由を手に入れるお金の大学」のp35に、保険の役割についてこのような記載があります。
次の2つの条件を満たすトラブルには保険で備えておく必要があるな
①起きる可能性は「超低い」けど
②現実に起きてしまったら損失が「超大きい」
医療保険も、この原則に沿って必要性を判断すべきです。
実は両学長は、医療保険を全面的には否定していません。(p45)
(がん保険についてのQ&A)
3人に2人は、50万〜100万円の自己負担で済んでるよ。若いうちから、普通に貯金していけば良くない?
ど〜しても不安な人は、貯金が貯まるまでは加入してても良いかもね。
このように、
貯金が少ない場合は、医療保険に入ることを検討していい。
20代の人にとっては、100万円の貯金自体かなりハードルが高いはずです。
治療費が最大100万円としても、仕事ができなくなったことを考え、さらに数ヶ月分の生活費は必要と考えられます。
そしてその間、貯金が切り崩されてじわじわ減っていくことの恐怖は非常に大きいものです。
その点も考慮すべきでしょう。
以下のようなケースでは医療保険は不要でしょう。
・病気や怪我になっても、治療費や数ヶ月分の生活費を含め、十分な貯金がある(最低100万円以上)
・貯金がなくても、困ったとき金銭的に援助してくれる親族がいる
逆に以下のようなケースでは、医療保険を考慮しても良いと思います。
・病気や怪我になったとき、治療費や数ヶ月分の生活費を賄えるほどの貯金がない
・金銭的に援助してくれる親族がいない
→そのため、病気や怪我になったら詰む
私が医療保険に入っていないのは、ある程度の資産があることに加え、親族のサポートが多少なりとも期待できるからです。病気や怪我になった場合に治療費を払うことができますし、しばらくは家族の生活を維持できます。
医療保険が必要かどうかは、財産の額だけではなく、家族の状況にもよります。
例えば、子供が中学受験のために塾に通っていて、毎月教育費がかかるとしましょう。教育費を減らすのは困難で、一家の大黒柱が無収入になったら急激に貯金が減ってしまいます。
こういう場合、貯金が多くても医療保険の必要度は高まると思います。
一方、20代の若者は入院リスクが低いとみなされるため、月額保険料が安い傾向にあります。月額1000-2000円程度の保険も販売されています。
一定以上の収入がある人には十分払える金額だと思います。
資産を増やすために「保険に入らず少しでも多く投資に回す」というのが、間違っているとは言い切れません。しかし、「リスクを下げる」ことを目的として保険に入ることを考えても良いと思います。
リベ大について思うこと
最後に、リベ大について思うことです。
「本当の自由を手に入れるお金の大学」はいい本です。投資だけでなく、日常生活上を送る上でも役立つお金の知識が満載で、どんな人にもお勧めできる本です。
ただし、読んで実践するには、
です。
今回のケースでも、両学長が「(がん保険には)貯金が貯まるまでは加入していてても良い」と書いている部分は無視されがちで、「医療保険は不要」の部分だけが一人歩きしていないでしょうか。
本を読んでいただければわかりますが、両学長は「〇〇は絶対ダメ」のような断定的なことはそれほど言っていません。
よく引き合いに出される「マイホーム」や「マイカー」についても、全面的に否定するのではなく、考え方の原則や、買う場合の賢いやり方を解説してくれます。
両学長の発信内容は優れています。そのためYouTubeのフォロワーが130万人を超え、書籍も相当売れました。
だがそれにより、リテラシーの不十分な人までも、両学長の動画や書籍からの発信を受けるようになりました。
情報の受け手があまりに拡大し過ぎて、情報を正しく理解せず曲解したまま自分の思考に取り入れた人が出てきたのです。
言葉の一部だけを切り取って
生命保険に入るのは情弱!
マイホームを買うのは情弱!
マイカーを持つのは情弱!
と決めつける。
しかもそういう人の一部は、事情があって掛け捨て以外の保険に入っている人、マイホームを買った人、マイカーを所有している人を否定します。時には喧嘩腰になるのでタチが悪いです。
情報を適切に読み解き、取捨選択する能力の大切さを感じます。
過去のいかなる時代においても、その能力が今ほど必要とされる時代はなかったのではないでしょうか。
情報が溢れる時代、ぜひこのことを心に留めておいてください。
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情弱レッテル、貼られたくないですねw
20年くらい前かな、生命保険は不要、が始まりでしたかね。もっと前かな?
昔からある貯蓄型生命保険は保険料が高い仕組みに作られている!と、暴露?されて。
掛け捨ての、保険料が安いのに入るのが合理的、と知りました。特約つけ過ぎ注意!も。
でもやはり、亡くなる確率は低いという理由は、ホッと気休めにはなりましたが、だから生命保険不要と言われても。。。うーん。
投資もそうですが、こうだ!!という主張の中で「でも…」と言い出すと叩かれる事もあります。
保険については、入っている人の理由を読むと納得しました。家族、仕事状況などそれぞれですから。流石に高い掛け金のに入る方はいなかったかな。
そんなこんなで…様々な保険商品が出てきました。不要も含め選択力が「必要」ですね。
まだまだ大変な状況ですが、どうかお身体に気をつけて下さい。
コメントありがとうございます。
リベ大に限ったことではありませんが、自分の頭で考えることを放棄している人が多い気がします。読解力の低さも関係しているのかもしれません。そういう人が権威者の意見を鵜呑みにして他人を叩くのは見ていられませんね。情報の溢れる時代、選択力は本当に必要ですね。
いつもとてもわかり易い記事をありがとうございます!
保険はギャンブルではないにせよ(まあ、期待値がマイナス=ギャンブルと定義すればギャンブルとも言える気がしますが)、過去最高の賠償金額はX億円もしたとか、最新医療はX千万円もかかるとか、脅しありきの勧誘手法を見ていると、お金儲けのために霊感商法に近い商売をしているケースが多いことは言い逃れできない様に思えます。
また、金融資産で見ると期待値がプラスの株式投資よりもマイナスの保険の方が3倍近くも多い(但し年金を含む)というのは何とも残念な限りです。日本人はプロスペクト理論が言うところの損失回避傾向が強いということなのかも知れませんが、只でさえ可処分所得が下がり続けている中でこれではどんどん貧しくなる一方です。
保険の本質は「リターンとリスクの両方を下げる」なので、期待値がマイナスなのは当然ですね。一方保険にお金をかけすぎて他(投資など)にお金を回せないのも問題です。これらを理解した上で、セールストークに惑わされず、必要最小限の保険に入るようにしたいですね。