株式投資

L倍レバレッジETFのリターンを表す式は、現実の株価でもほぼ成立する

カガミルです。
レバレッジETFとビットコインに投資しています。

前回の記事で、L倍レバレッジETFのリターンを表す式とその証明を提示しました。

この式は株価が幾何ブラウン運動に従うという仮定に基づいています。つまり、株価の日々の変動率(の対数)が正規分布に従う必要があります。

実際には株価の変動は完全な正規分布ではなく、確率がほとんど0となるような極端な変動がそれなりの頻度で見られます。リターンの頻度分布で山の裾野が厚くなることから「ファットテール」と呼ばれます。

ここでこんな疑問が生じます。

この式は株価モデルだけではなく、実際のレバレッジETFで成立するか?

せっかく証明したL倍レバレッジETFのリターンを表す式も、現実の株価で成り立たないなら机上の空論になってしまいます。

この記事では、QQQと&P 500のデータの1年ごとのデータを用い、L倍レバレッジETFのリターンを表す式が機能しているのかを調べました。

その結果、

L倍レバレッジETFのリターンを表す式は、現実の株価でもほぼ成立する

ことがわかりました。

QQQでの検証

2倍、3倍のリターンを表す式

L倍レバレッジETFのリターンを表す式を改めて提示します。

まずはNASDAQ100で検証します。

基準となるインデックスはQQQ、L = 2はレバナス、L = 3はTQQQであり、これらのデータを用います。

QQQは0.2%の経費率がかかるため、QQQではなくNASDAQ100そのものの配当込みリターンを用いるのが理想です。

しかしNASDAQ100指数の過去の配当込みデータを見つけることができなかったため、QQQを用いることにします。

ここではc2 = 0.016, c3 = 0.0205とします。

上の記事によればc2 = 0.0165ですが、こちらの記事と齟齬がないよう端数を無視しました。

Lやc2, c3を代入すると、レバナスとTQQQのリターンは以下のように表せます。



リターンのデータの取得

ここではレバナスの代わりに、ETFのQLDのデータを用います。

QQQとQLDとTQQQの配当込みリターンは、Portfolio Visualizerから得られます。

まずはQQQとQLDです。QLDは2006年6月19日に設定開始となっているので、”Backtest Portfolio”で2007年から2020年までのQQQとQLDのデータを取得します。

Portfolio #1はQQQ 100%, Portfolio #2はQLD 100%とします。”Analyze Portfolios”のボタンをクリックし、結果の中の”Annual Returns”のタブをクリックすると下のように表示されます。

赤線で囲った部分が、QQQとQLDの配当込みリターンです。

L倍レバレッジETFのリターンを表す式に出てくるRの単位は「倍」なので、そのように直します。

例えばQQQのReturnは2007年に19.02%となっていますが、この場合はR = 1.1902となります。

また、その年のQLDの実際のReturnは28.77%ですが、これは上のΡ(2)に相当するのでΡ(2) = 1.2877となります

次はTQQQです。

設定開始は2010年2月9日なので2011年以降のデータを取得しますが、同様にPortfolio Visualizerから取得できます。

ボラティリティのデータ

σ、すなわちQQQの日次変動率から計算されるボラティリティのデータが必要です。

ボラティリティの求め方はこちらの記事で解説しています。

記事の中のExcelファイルに1年間のQQQのデータをコピペすれば求めることができます。

なおExcelファイルでは1年=250日としていますが、ここで用いるσはその年の実際の営業日数で計算します(例えば2020年なら253日で)。

米国3ヶ月債の利回り取得

FREDのサイトからダウンロードできます。

ダウンロードしたファイルには、過去の毎月の金利が書かれています。その年の12ヶ月の金利を平均したものをbとしました。



検証結果

2020年を例にとって説明します。

Portfolio Visualizerのデータより、R = 1.484, Ρ(2) = 1.889, Ρ(3) = 2.1005とわかりました。

2020年のQQQのデータで計算すると、σ = 0.360となります。

bについてですが、2020年の1月から12月までの金利の単純平均が0.365%なので、b = 0.00365とします。

Rとσとbを式の右辺に代入して計算してみましょう。

上の式の結果がΡ(2) = 1.889に、下の式の結果がΡ(3) = 2.1005に近いほど、近似がうまくいっていることを示します。

同様の計算を、QLDについては2007年から2020年、TQQQについては2011年から2020年で行った結果を示します。

各年のQLDまたはTQQQの計算上のリターンを、実際のリターンであるΡ(2)またはΡ(3)と比較してみてください。

見やすいように、変化率を%で表示します(小数第2位を四捨五入)。

かなり精度が高い近似と言えるのではないでしょうか。

2020年のTQQQではやや誤差が大きかったですが、これは3月のコロナショックでの株価の変動が正規分布から大きく外れたファットテールとなったためです。

QLDに至っては、ほとんどの年で誤差1%以下です。

特筆すべきは、リーマンショックがあり相場が不安定だった2008年でもかなり精度が高いという点です。

L倍レバレッジETFのリターンを表す式が現実のNASDAQ100でも機能していることがお分かりいただけると思います。



S&P 500での検証

S&P 500でも同様の検証を行ってみましょう。2倍レバレッジETFはSSO、3倍はSPXLです。

基準インデックスはVOOなどのETFでも構いませんが、なるべく元の指数のデータを用いたいためS&P 500のデータを選びました。

まずは2倍、3倍のレバレッジのリターンを表す式を決定します。

c2 = 0.016はNASDAQ100と同じにしますが、c3 = 0.0215としました。

これは、レバレッジETFを研究されているかきすけ先生の記事に基づいています。

よって、式は以下の通りです。



S&P 500の配当込みデータもPortfolio Visualizerで見ることができます。S&P 500の最も長期のデータが欲しい場合は、

Assetのところに

“VFINX”

と入力する

のがお勧めです。これなら1985年以降のリターンを知ることができます。ちなみにVFINXはバンガードのファンドのようです。

そしてQQQの場合と同様に計算した結果を示します。

変化率を%で表示したのがこちらです。

SSOについては極めて精度が高いと言えます。これは2008年にも当てはまります。

SPXLについては、2009年と2010年は誤差が大きいものの傾向は捉えています。それ以外の年では概ね高精度と言えるでしょう。



終わりに

L倍レバレッジETFのリターンを表す式が現実の株価でも概ね成立することが今回の検証でわかったため、これからもこの式を使って研究を続けたいと思います。

他のレバレッジETF(例えばTECLやWEBL)でも成立するかは未確認ですが、余裕があれば検証したいと思います。

参考になれば幸いです。

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ABOUT ME
カガミル
理三→東大医学部卒の医師です。 息子が二人います。 子育て、教育、東大医学部/医療、投資について発信します。

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