レバレッジETFとビットコインに投資しています。
初回公開日:2021年5月8日
最終更新日:2022年4月10日
CUREは、ヘルスケアセクターの3倍レバレッジETFです。
こちらの記事で紹介したように、ヘルスケア企業の堅実性と安定性により、CUREは市場平均と同等以上のパフォーマンスとドローダウンの低さを兼ね備えています。
CUREが設定されたのは2011年6月15日であり、それ以前の経済危機を経験していません。
ここで疑問です。
今回はXLVのデータから擬似CUREを計算し、検証しました。
擬似CUREの計算法
まずはXLVを元に擬似CUREのデータを作成します。
なお理想はXLVが連動するHealth Care Select Sector Indexから計算したいところですが、Yahoo Financeなどで過去データが見つからなかったのでXLVで代用します。
Yahoo FinanceからXLVのデータをダウンロードします。
XLVは1998年12月22日以降のデータがあり、2021年4月現在までのグラフは下の通りです。

1998年から2011年までの間には、ITバブル崩壊とリーマンショックという大きな経済危機がありました。
しかし2000年のITバブル時の低下はあまり目立ちません。ナスダック100が80%以上暴落したのとは対照的です。
2008年のリーマンショックではかなり下落幅が大きいですが、S&P 500よりは小さかったです。
XLVから擬似CUREを計算する方法ですが、理想的には
(CUREの1日の変動率)=3×(XLVの1日の変動率)…①
という式が成立します。
まず①の式を元に、2011年6月15日のXLVのデータから理論上のCUREの価格を計算し、実際のCUREと比較しました。
意外なことに、計算上のCUREよりも実際のCUREの方が価格が高かったです。
経費や金利を考慮すれば実際のCUREの方が低くなるはずですが、そうならなかったのは、CUREを構成する現物株の配当も価格に上乗せされたためかもしれません。
(私も詳細は理解できていませんが、CUREは3倍の変動を実現するために、index swapという物と現物株を含んでいます。)
そこで①の式を補正せずそのまま使うことにしました。
1998年12月16日から2011年6月15日までの擬似CUREのデータを計算し、2011年6月15日にデータが連続性を持つように数値を調節しました。最終日は2021年4月30日です。
結果は以下の通りです。

縦軸は対数グラフであることにご注意ください。
そして、擬似CUREと実際のCUREのデータを合わせ、「全期間CURE」と呼ぶことにします。
全期間CUREのデータ
それでは、全期間CUREのデータの経時変化を見てみましょう。ヘルスケアの非レバレッジETFであるXLVとも比較します。
ITバブル崩壊
1998年12月22日、CUREは7.70ドルで始まります。世はITバブルでナスダック市場は勢いに乗っていました。
ヘルスケア業界の勢いはハイテクには及ばないものの、少しずつ上昇していました。2000年1月10日にCUREは15.05ドルと、最初のピークをつけました。
しかしITバブルが崩壊し、ヘルスケア業界にもその余波が及びます。
XLVは、2000年1月10日のピークから2002年7月23日の底までの期間で32.83%下落しました。
CUREは同じ期間で2.88ドルまで下落と、実に最初のピークから80.87%も下落したのです。
一方、同じ時期のS&P 500の最大ドローダウンは-49.15%でした(ピークが2000年3月24日、底が2002年10月9日)。XLVの-32.83%はこれよりだいぶましな下落率であり、ヘルスケアの底堅さが発揮された形となりました。
その後XLVは上昇し、2006年2月27日には最初のピークを回復しました。
しかしレバレッジETFの減価が大きく響き、CUREは回復する気配がありません。2007年5月7日には9.79ドルと小ピークをつけましたが、そこは最初のピークから34.99%も下落した位置でした。
リーマンショック
2007年のサブプライムローン問題に端を発し、2008年にはリーマンショックが起きます。
XLVはこの期間で40.58%下落しました(2007年5月7日がピーク、2009年3月9日が底)。
そして、同じ期間でCUREは84.78%も下落したのです。
最初のピークから見ると90.38%も下落したことになります。
それでも、S&P 500がこの期間で56.78%も下落(2007年10月9日のピークと2009年3月9日の底を比較)したのと比較すればXLVの40.58%ははるかに低く、またしてもヘルスケア企業の安定性を存分に発揮する結果となりました。
その後
2010年代は好景気が続きます。
XLVは、2012年3月13日にリーマンショック直前(2007年12月10日)の価格を回復します。
CUREは2013年10月17日、ようやく最初のピークである15.05ドルを超えます。回復までに実に12年9ヶ月を要したことになります。
そして2021年4月現在、CUREは史上最高値を更新し続けています。
まとめ
全期間CUREのデータをまとめると、以下のようになります。
1998年12月22日(開始日) 7.70ドル
2000年1月10日 15.05ドル(最初のピーク)
2002年7月23日 2.88ドル
(最初の底で、最初のピークから-80.87%)
2007年5月7日 9.79ドル(小ピーク)
2009年3月9日 1.45ドル
(大底で、最初のピークから-90.38%、小ピークから-84.78%)
2013年10月17日 15.10ドル(最初のピークを回復)
2021年4月30日 93.04ドル
※価格は小数第3位で四捨五入
全期間でのリターンはどうでしょうか。
CUREは1998年12月22日から2021年4月30日の22年4ヶ月で約12.1倍となりました。これよりCAGR(年平均成長率)を計算すると
CAGR 約11.8%
となります。
ちなみにほぼ同じ期間でXLVのCAGRは8.68%でした。暴落があった割にはCUREのCAGRは悪くなかったと言えます。
少し古いデータですが、以前noteにナスダック100での検証記事を書きました。
擬似TQQQはITバブル崩壊で99.95%暴落、リーマンショックで94.14%暴落しました。そして現在もピークまで戻っていません。
考察
以上より、
全期間CUREは、ITバブル崩壊、リーマンショックのいずれにおいてもドローダウンは80%台で済み、その後回復した。
2回の大きな経済危機を合わせても最大ドローダウンは90%強で耐え、力強く復活しました。
ヘルスケアの安定性ゆえの結果であり、他のレバレッジETFでは今後もこのような芸当は不可能だと思います。
これをどう捉えるかです。
「CUREはリーマンショックでも80%台の下落で済む」とポジティブに考え、レバレッジETFの中でも安心して持てると選択するのも手かもしれません。
ただ、2000年代前半のような相場で持ち続けるのは辛かったはずです。冴えない相場で擬似CUREはどんどん減価していきました。
2010年代になってようやくレバレッジETFの本領を発揮しました。
レバレッジETFの長期保有自体は否定しませんが、それに適した相場、適さない相場があります。
結果的には過去の20年間持ち続けても大丈夫だったとしても、相場状況を考えずにCUREをガチホするのはお勧めしません。
投資はくれぐれも自己責任で。
皆様の応援が励みになります。
1日1回、クリック(↓)をよろしくお願いします。
にほんブログ村